『フリーランス! 』。やたら、この言葉がニュースなどで叫ばれております。

そもそも『フリーランス』とは何なんでしょうか?厚生労働省の「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」で以下の定義とされています。経済産業省の2021年公表したガイドラインが先のようですが、下記は厚生労働省のものです。定義内容は同じ内容です。

フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン(令和3年3月26日 、内閣官房 公正取引委員会 中小企業庁 厚生労働省)

・フリーランスの定義
 「フリーランス」とは法令上の用語ではなく、定義は様々であるが、本ガイドラインにおける「フリーランス」とは、実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者を指すこととする。

要約すると、フリーランスとは、会社や団体などに所属せず、仕事の成果に応じて雇い主と契約する個人事業主といった感じでしょうか。

フリーランス職種としては、ライターやカメラマン、デザイナー、プログラマーなど、個人で仕事をしている人のことを指すことが多く、自分の能力を売り込み、才覚で仕事をしている人といえます。

税務上、よく使われる用語のひとつに「役務の提供」があります。役務とは、一般的には単純にサービスを表す言葉として解されています。税務においてもこれと同様に「役務の提供」を解する場合があり、その場合の「役務の提供」とは、法人や個人が事業として行っているサービスのことをいいます。

まさにフリーランスは「役務の提供」を行っている個人事業主なのであります。

2022年現在の働き方は、正社員、派遣社員、パート・アルバイト、フリーランスが挙げられます。

正社員は勤務先の企業と雇用契約を結び、派遣は派遣会社と雇用契約を結びます。

派遣社員の場合は、派遣先の企業と雇用関係にあるわけではありませんが、派遣先の企業が指揮命令権を持ち、作業の指示を出します。

フリーランスは、個人事業主や法人として案件を受けるため、参画先企業との雇用契約を結びません。

また、フリーランスの契約には、請負契約と準委任契約の2種類が存在します。請負契約では、案件ごとに求められる成果物が完成するまでが契約の基本となります。

例えばWebデザイナーでしたら、制作物を納品し、クライアントの修正要望を受け、OKが出るまで修正を行うのも契約の内です。

もう一方の準委任契約では、基本的には定められた期間内で、スケジュールに従い作業を行います。

そして、パートとは「一週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者に比べて短い労働者」と定義されている雇用形態で、アルバイトとは、一般的に臨時に雇用される者をいいます。

働き方が沢山ありますね。


◆労働派遣法と正社員(ちょっと回り道します)

フリーランスの問題を語る前に1986年7月に施行された労働者派遣法を思い出しました。

派遣社員のメリットとしては、ライフスタイル(勤務地、日数、時間、職種)にあわせて仕事を選べますし、いろいろな職場で経験が積めます。スキルに応じて高い賃金を得ることができますし、パート・アルバイトより高い賃金を獲得することができます。

逆に派遣社員のデメリットは、3ヶ月や6ヶ月更新の契約期間更新がありますが、企業側の事情により契約終了となる場合があります。そして、契約を更新しても3年しか同じ職場にいることもできません。

そして派遣社員の業務範囲として企画や立案などの責任があり裁量の大きい仕事は任せてもらえずに、能力のある人であれば物足りなくなることもあります。逆に責任や仕事量が社員と同等にされてしまい、派遣社員の範疇を超えてしまうことで不満となることもあります。むしろ、後者が多いと思います。

企業にとってのメリットは業務量の増減によって、人員を補充したり削減することができ、契約期間があるので雇用がしやすく、人件費を低く抑えることができます。

もし、正社員を雇うと、下記のコストを企業側が負担することになります。

❖正社員のコスト

 ・採用費
  求人雑誌や求人サイトへの掲載費用です。掲載する雑誌やサイトによっては、成功報酬を払わなければならない場合もあります。

 ・教育費
  社員をスキルアップさせるための研修費です。研修に使う場所代や資料代、講師代がかかります。

 ・準備費
  社員のデスクやパソコン、電話機、制服、名札など会社が新しく用意する備品にかかる費用です。例えばパソコン1台で15~20万程度かかります。

 ・毎月の給与、半期毎の賞与
  給与は毎月社員に支払う給料です。基本給プラス能力給の形態で半期毎や年毎の人事評価によって金額が変わっていきます。
  賞与は年間の収入と支出を計算し、その業績が好調な場合において社員に利益配分を行うために賞与という形式にて支給されます。ここに最近は、組織や各部門、もしくは個人の業績に連動して支給額が変わる制度が加わってくると思います。
 ・残業代
  社員が残業した場合、残業代を支払わなければなりません。残業代の割増率は状況によっていくつかありますが、例えば労働時間が8時間を超えた場合は基本給を時給換算して、その時給に25%増しで支払うことになります。

 ・福利厚生費
  住宅手当や交通費など、基本給以外に支払うお金です。ほかにも医療費など「従業員の生活向上や労働環境改善のため」であれば適用になります。
  他にもウォーターサーバーやコーヒー、オフィスコンビニなど日常的なものから、慶弔見舞金、社内での飲み会費用なども含まれます。

 ・社会保険
  社会保険(労災保険・雇用保険・厚生年金・介護保険・健康保険)は従業員の給料によって負担額が変わりますが、正社員の場合の会社の負担額はおよそ給料の15%と言われています。
  それぞれの保険料は労働者と事業者で分担すると法律で決められています。負担の割合は保険ごとに決まっており、業種によっても異なります。

 ・退職金の積み立て
  社員にかかるコストは社会保険料だけではありません。近年退職金制度のない企業も増えてきましたが、制度のある企業はもちろん積み立て費用がかかります。
  もし新卒から40年間の雇用で2,000万円の退職金を計画していたとすると、単純計算で毎年50万円を積み立てる必要があります。

東京都の中小企業の正社員で月給25万円、交通費1万円/月 賞与・退職金ありの場合ですと、正社員に比べて派遣社員は120万円ぐらいコストを抑えることができます。

派遣社員には、たしかにデスクやパソコン、電話機などを準備しますが、社員の物を流用ですので、企業側は基本的に給与だけの費用ですみますので、企業側にとって派遣社員は便利な存在なんですよね。

こんな企業側に圧倒的な有利の「労働派遣法」ですが、当初は結構歓迎されていたのではないかなという記憶なんです。

街頭インタビューで「これからは正社員で長時間働く時代ではない!」「自分の好きな時間に効率よく働くことができる!」「派遣社員でいろいろな職場に行ってスキルアップをしたい!」というような明るい?未来に向かって力強く語る人たちがいたことを覚えています。

たしか「1999年12月1日 派遣業種の拡大改正(全職種の派遣法適用)」であったかもしれません。若かりし正社員の自分もよくわかっておりませんでしたが、おぼろげながらに「派遣で働くのは大変だと思うけどなぁ。」を不安に思っていましたが、これはものの見事に的中して2008年のリーマンショックによる派遣切りが社会問題となり、特に派遣先の寮から追い出された人たちが寝泊まりするところがないので「年越し派遣村」の騒動にまで発展する事態となりました。

※年越し派遣村(としこしはけんむら)とは、リーマン・ショックの影響により派遣切り等がおき、複数のNPO及び労働組合によって組織された実行委員会が2008年12月31日から2009年1月5日まで東京都千代田区の日比谷公園に、生活困窮者が年を越せるように開設した一種の避難所である。

1986年から2007年は派遣業務の業種緩和や派遣期間の延長(2007年製造業が1年から3年に延長)など、派遣業務の緩和をしていきましたが、ここから「労働者派遣法」に対する批判が高まって、ここから改正していきますが、2020年4月の労働者派遣法の改善では「同一労働・同一賃金」として正社員と非正規社員の不合理な待遇を改善する改正(中小企業は2021年4月)です。企業側での罰則はありません。制度はガイドラインを公表しており、法的拘束力はありません。

しかしながら、企業側がSNSで拡散されてしまうなど、世間への信頼低下や、損害賠償請求など訴えられてしまうことも考えられますので、企業側も無視することはできません。

正社員と同じ業務を行っている場合は、賃金(基本給、残業、賞与、役職手当、通勤手当、家族・住宅手当など)は同じ金額をもらえるわけです。

様々な派遣法改正によって企業側に派遣社員を雇うメリットがなくなりつつあります。

そこで企業側は考えました。コストを抑えることができる新たなる枠組みです。

これが「フリーランス」です。

◆フリーランス(働きようによってはフリーターとかわらん!)

まず、フリーランスになるには、何か手続きとか登録などは必要ではなく「フリーランスです。」と自分で名乗れば、フリーランスになることが出来ます。

フリーランスと企業の契約形態としては、単発の仕事ごとに契約を結び、報酬を得る人や働き方となします。主に請負契約や準委任契約などを結び、求人・案件ごとの発注書を受け取り仕事を開始することが一般的なフリーランスの働き方です。

高いスキルと自己管理能力があり、仕事の出来映えで顧客の信頼をしっかり得ている人なら、フリーランスとして働いても平均的なサラリーマンの年収を超える収入を得られるケースも多くあります。「働いた分だけ報酬がある」というわかりやすさも、フリーランスで仕事をするうえでの大きなモチベーションです。

企業に雇用されずに個人で仕事を受けて働くため、働く場所や時間にとらわれないことが最大の魅力であり特徴となっています。

そして、フリーランスとして働く人に定年はありません。気力や体力、クライアントの要望に応えるスキルを維持していれば、たとえ何歳になろうと仕事を続けることができます。

いいことだらけに見えますフリーランスですが、デメリットもあります。

これが一番のデメリットかと思いますが1つ目は、仕事や収入が不安定です。個人事業主ですので、自分で営業して仕事を獲得する必要があります。仕事を取ることができないと当然収入を得ることはできませんし、値段交渉の過程で百戦錬磨の企業側の交渉人に値切られてしまう、また理不尽な案件(期間や仕事量)を押し付けられてしまうこともあります。

また、案件を頂いている企業の経営状況の悪化や倒産などで、仕事が突然なくなる、支払いが滞るといったこともあります。支払の催促を自分自身が行わないといけません。

2つ目は、給与所得者からフリーランスになると、加入する年金が「厚生年金から国民年金に変更」されます。自動的に切り替わるのではなく、みずから届け出る必要がありますので注意してください。

3つ目は、健康保険は国民健康保険に加入するか、勤め先が加入していた健康保険組合の健康保険を任意継続するか(最大2年間)を選択する必要があります。

会社で働いていた時は企業側が年金や保険料を折半で負担してくれましたが、フリーランスはすべて自己負担となります。

4つ目は、確定申告を自分で手続きすることになります。正社員は勤務先で年末調整が行われるので、気にする必要はありませんでした。しかし、個人で確定申告を行う場合には収入や経費などを全て管理することになります。

5つ目は、有給休暇がないことです。会社員には必ず有給休暇があるので、会社を休んでも収入が入ってきます。フリーランスはいつでも休むことはできますが、働かないと収入は入りません。

6つ目は、社会的信用が低くなります。

 ・クレジットカードの審査で落ちる
 ・住宅ローンの審査で落ちて借りれない
 ・物件が借りれない
 ・銀行からお金を借りるのが難しい

上記の内容が必ず受けられなくなるという訳ではありませんが、正社員と比べると確実に難しくなります。

◆やるね!搾取側の人間たち

これを見て、どう思いましたか?

労働派遣法が改正され始める2007年までの派遣社員の待遇と何ら変わらないじゃないか?と思いませんか。

圧倒的に企業側は有利になっています。賃金(基本給)だけを払えばよく、残業代や賞与、年金や健康保険の折半、福利厚生などの正社員に費やすコストを削減できるのです。そして、結果が伴わなければ、すぐに契約終了にすることができますし、案件の賃金の折衝で、安く買いたたくことができます。また、契約形態も自由に企業側の有利に変えることができます。

ニュースでフリーランスで「こんなはずじゃなかった!」というようなフリーランスの実態を行っておりました。それによると、元々は運送会社の会社員でしたが、フリーランスになり企業側と契約を結んでいるそうです。

契約を始めた当初は歩合制で、自分の都合のよい時間で仕事をすることができたのですが、企業側より契約変更の打診がありました。

それは歩合制から固定給への契約変更でした。1日(たしか)18,000円でした。

そうなると、皆さんどうなると思いますか?

当然のごとく、企業側は1日の配達量を大幅に増やしてきました。それは際限なく増やしてきたのです。朝早く8時ぐらいから配達を始めて、昼食をとるまともな時間もなく、働き続けて、夜22時すぎまで14時間労働で働くことになったのです。そうなのです。ノルマができたのです。

インタビューに答えていましたが「どうしてフリーランスになったのか?」という質問に対して『子供と遊べる自由な時間が欲しかったから..。』

私『え!それだけ?』。テレビに突っ込んでしまいました。

おそらく契約終了になるからと思い、固定給への変更を了承してしまったのも間違いかと思います。

タラレバ論理ですが、いち社会人から言わせてもらいますと「考えが足りない」ということになります。

これって、「フリーター」とかわんないじゃないかと思いますね。「フリーター」の語源は、和製の造語であり、フリーランス・アルバイターの略称といわれています。

『あぁ、そうか!』と思ってしまった次第です。



※最後に
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