フィギュアスケート年齢制限ミラノ五輪は17歳 ISU総会で段階的引き上げ可決(2022年6月7日)

国際スケート連盟(ISU)は7日、タイで行われている総会で、フィギュアスケートの年齢制限を段階的に17歳に引き上げることを可決した。投票の結果は賛成が100、反対が16。3分の2を満たした。

これまではシーズンに入る7月1日までに15歳に達することが条件だった。来季の22~23年シーズンは15歳とし、23~24年は16歳、24~25年は17歳に引き上げる。

スピード、ショートトラック、シンクロナイズドスケーティングにも適用され、新シーズンが始まる7月1日より前に17歳に達していることが条件となる。

低年齢の選手に対する心身の負担が大きな理由。ISU選手委員会が加盟国・地域を対象に20年12月と21年1月に実施した調査では、86・2%が引き上げに賛成していた。この日の会議でも、各国から「選手の健康を守ることが最優先されるべき」「特に女子の選手寿命が短すぎる」などの声があがった。

北京五輪で15歳だった女子のカミラ・ワリエワ(ロシア)にドーピング問題が発覚。世界反ドーピング機関(WADA)の規定で16歳未満の「要保護者」に該当し、スポーツ仲裁裁判所(CAS)が出場継続を認めた判断が物議を醸した。

女子で4回転ジャンプを跳ぶ注目の13歳、島田麻央(木下アカデミー)は26年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪に出場できないことになった。

※シンクロナイズド・スケーティング(Synchronized skating)は、フィギュアスケートの一種で氷上におけるシンクロ競技にあたる。男子シングル、女子シングル、ペア、アイスダンスに続く新たな競技として生まれた。1チーム16人で演技を構成する。

フィギュアスケートの年齢制限が15歳から17歳に引き上げられます。北京五輪のカミラ・ワリエワ(ロシア)のドーピング問題から発した問題は、年齢制限の引き上げで幕引きとなります。

ドーピング検査で陽性反応を示しながら出場を認められたカミラ・ワリエワ(ロシア・オリンピック委員会=ROC)は、ショートプログラム(SP)こそ1位でまとめたもののフリーで大きく崩れ、「4位」にとどまりました。

ここが一番の問題でして、本来であれば、陽性反応が出た段階でワリエワ選手は出場できないと判断すべきだと思います。

そのまま出場させてしまいますと、ドーピング陽性の選手と陰性の選手が競うことになり、公平性の観点から、大きく逸脱してしまうことになります。

ワリエワ選手は15歳でした。彼女は周りの選手から、『ドーピングをやったかもしれない』という冷たい目に加え、『なぜ、あなただけ特別扱いなのか』という2つの目で見られるところが気の毒です。そういう環境に彼女を置くこと自体が間違いで、出場させないことが、彼女の健康や将来の為にも良かったと思います。

選手を周りの好奇な目や疑惑の目から保護するためにも出場停止にすべきだったのです。

そして、ロシア勢の4回転ジャンプに象徴される、フィギュアスケート界のジャンプ偏重の採点に問題もあるかと思います。

2022年4月4日に米スタンフォード大学で東アジア研究を専門とする元フィギュアスケート選手のナンシー・ハミルトン氏が、国際スケート連盟が規定する現行のフィギュアスケートの採点システムを批判し、4回転ジャンプを重視せず芸術性をより高く評価するよう提言しました。

米紙「スタンフォードデーリー」はハミルトン氏のコラムを掲載。現在の採点システムでジャンプばかりが高得点を獲得し、特に女子のロシア勢で身体的負担が顕著になっていることを危惧しています。

採点システムに関しては、何らかの変更が必要ですが、フィギュアスケート界のロシアとアメリカの覇権争いもあります。

そもそも、オリンピックに年齢制限はあるのでしょうか?

これはオリンピック憲章第5章42(2021年版)「オリンピック競技大会」にて『オリンピック競技大会では競技者の年齢制限はない。』と明記されています。

❖オリンピック憲章(75ページ)

第5章 オリンピック競技大会

42 年齢制限

42 オリンピック競技大会では競技者の年齢制限はない。ただし、IFが競技規則でそれを定め、IOC理事会より承認されている場合は、その限りではない。

オリンピック憲章(電子ブック)

「ただし、IFが競技規則でそれを定め、IOC理事会より承認されている場合は、その限りではない。」と書かれておりますね。


IFとは「国際競技連盟(こくさいきょうぎれんめい、International Federations)」のことで、競技ごとにルールや大会などを統括する国際機関のことです。

各国の競技団体を国際的に統括する非政府組織。略称IF。各IFはオリンピックや世界選手権などでそれぞれの競技の運営にあたると同時に、国際的に適用する大会参加規定や競技規則(ルール)を独自に制定する。

国際オリンピック委員会(IOC)が2020年のオリンピック憲章で夏季オリンピック大会の実施競技として公認しているIFは世界陸連、国際サッカー連盟、国際柔道連盟など28団体で、冬季オリンピック大会としては国際スキー連盟、国際スケート連盟など7団体がある。

国際競技連盟が出場者に関する年齢制限を定め、IOC理事会に承認されている場合には、該当する競技に年齢制限が設けられます。

つまり、オリンピック全体に統一された年齢制限は設けられていないものの、競技ごとに年齢制限が存在する場合があるという答えになります。

制限がある理由として、選手の健康面に配慮するためです。

身体がまだ出来上がっていない状態で過度な練習を繰り返すことは、ケガや故障につながる恐れがあます。

また、種目によっては大人の中で競技を行う危険性も大きいです。

このようなリスクを避けるため、年齢制限を設ける競技も少なくありません。

年齢制限のある競技はどんなものでしょうか?

❖年齢制限のあるスポーツ(一部)

・サッカー
 男子はオリンピック前年の12月31日時点で23歳未満。女子は年齢制限なし。
・ボクシング
 競技者の年齢は17〜34歳。
・競泳、飛び込み
 15歳以上。
・新体操
 16歳以上。
・体操
 男子16歳以上、女子15歳以上。

一番有名なのはサッカー男子の23歳未満ですよね。よくオリンピック代表のことをしばしばU-23代表と言っている場合がありますし、本大会に限り前年の12月31日時点で23歳以上の選手を最大3人まで加えることができるオーバーエイジ枠があり、誰が選ばれるんだろう?なんて議論の対象になりますよね。

他にも東京オリンピックの陸上競技の年齢制限は以下のとおりです。

❖2020年東京オリンピックの陸上競技
 20歳以上(~2001年生まれ)    全ての種目
 18~19歳(2002~2003年生まれ) マラソン、50km競歩を除く種目
 16~17歳(2004~2005年生まれ) 投擲競技、十種競技/七種競技、10000m、マラソン、競歩を除く種目
 16歳未満(2006年以降の生まれ) 参加資格なし

本来は、オリンピック憲章に謳っている通り『オリンピック競技大会では競技者の年齢制限はない。』でいいと思うんですが、その時々の政治的な判断で決められてしまうことが多いです。結果的に、門を閉ざされた選手が一番の被害者なんですけどね。



※最後に
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