※2022.05.28更新(救命いかだの設備義務化へ)

寒冷地の救命設備に課題 「救命いかだ」は予算面で普及進まず(2022年5月1日)

北海道・知床半島沖で観光船「KAZU I(カズワン)」が沈没した事故を受け、寒冷地で運航する観光船の救命設備について課題が浮かんでいる。今回の事故現場は海水温が低く、乗客が救命胴衣を着ていても命にかかわる状態に陥ったとみられるためだ。専門家は地域ごとの事情に応じた設備の必要性を指摘している。
(中略)
カズワンは総トン数が19トンで、20トン未満の「小型船舶」に該当する。沿岸区域を航行する小型船舶の場合、乗船できる最大人数分の救命胴衣に加え、膨張式の「救命いかだ」か「救命浮器(ふき)」を備え付けるよう、小型船舶安全規則で義務付けられている。
(中略)
今回事故に遭ったカズワンは救命浮器を備えていたが、救命いかだの搭載は確認されていない。事故時の現場付近の水温は2~3度だったとみられ、浮器につかまっていても15分から30分で低体温症に陥り、意識を失うという。
(中略)
救命いかだの購入費は小型船舶用でも、1点約50万円かかる。一方で救命浮器は約10万円で、費用面から救命いかだの普及が進まない実情がある。
(中略)
公益社団法人・日本水難救済会(東京都千代田区)の遠山純司常務理事は「水温の低い状況で起きた今回のような事故では、救命胴衣があっても海に飛び込むのは厳しい。地域事情に即した対応が不可欠であり、寒冷地の観光船事業者は旅客が水につからず安全に救助を待つことができる方法を早急に検討すべきだ」としている。

知床観光船の海難事故では、海に投げ出された後に、海水温度が2~3℃でしたので、30分程度で低体温症にかかり、動けなくなったところを荒れた三角波にのまれて溺死してしまったと想定されています。

※進行方向の異なる二つ以上の波が衝突したときにできる波高が大きく峰のとがった波。 台風時の海に典型的にみられ、航海中の船舶にとってきわめて危険。

今回の知床観光船では、救命胴衣を備えていましたが、寒冷地における低水温には効果が全くないものだったのです。

夏場の気温は最高気温でも25~30℃、水温は15~20℃となります。

夏場でも水温15~20℃の場合は低体温症で意識不明に至るまで2~7時間、死に至るまで2~40時間となりますので、最長時間で考えても意識不明まで7時間、死に至るまで40時間であり、今回の海難事故発生は4月23日で、今日が5月3日ですので、240時間が経過しており、残り12人は夏場でも絶望的です。

夏場の状態で仮定しますと、4月24日発見(24時間経過)の最初の10人、4月25日(48時間経過)の子供、4月28日次の3人発見(96時間経過) ですが、助かる可能性があるのは最初の10人だけであり、実はとても危険なツアーであることがわかりました。

寒冷地では、救命胴衣は全く意味をなさないということで、そこで浮上してきますのは「救命いかだ」の存在です。ただし、この救命いかだを設置するとなりますと、コスト面での障壁と設置面の障壁があるかと思います。



今回の知床観光船『KAZUⅠ(カズワン)』は、定員65名ですので、上記楽天で見つけた救命いかだが4人乗り1点30万としますと、最低17台は必要となり、30万×17台で510万円となります。

決して高いわけでもありませんが、本来は海難事故は頻繁に発生するものではありませんので、壊れたり劣化したりした場合に備えて、買い替えなどで維持していかないといけません。

そこで、運行ルールを見直して対処しようという動きがありました。

「複数船で出航」厳格化検討、「知床遊覧船」と同業3社がルール見直しへ…沖の気象状況も考慮(2022年5月2日)

(前略)
協議会関係者によると、現在は出航の可否を港周辺の天候で判断しているが、沖の気象状況も判断材料とするようルール化する。また、カズワンが単独航行して事故に遭ったことから、万が一の場合に救助できるよう、複数の船での出航を厳格化することも検討する。
(中略)
協議会は会長(現在の会長は事故を起こした知床遊覧船の桂田社長)を交代させた上、新たな会長の下でルール変更の協議に着手する方針だという。

複数の船で運行するのであれば、万が一の事態でも救助が海上保安庁に連絡して待つよりも早い救助ができそうです。

ただ、現在はどうなのか?わかりませんが、ビジネスの観点から言いますと同時の複数の船が出向となりますと、お客の数が偏ったりする可能性もあります。微妙に運行時刻をずらすことによって、お客の数が分散していたのに、同時出向となりますと、少ないパイの奪い合いになりかねないということです。

同時出向とは書いていませんので、具体的にどのような運行を同業3社が行っていくのか見守っていきたいと思います。

❖寒冷地の小型旅客船 「スライダー付き救命いかだ」搭載義務化へ【2022.05.28】追記


救命いかだを一定の水温を下回る海域での設備を義務化する方向になりました。

寒冷地の小型旅客船 「スライダー付き救命いかだ」搭載義務化へ(2022年5月27日)

北海道・知床半島沖で観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」が沈没した事故を受け、国土交通省は寒冷地など水温が低い海域で運航する小型旅客船を対象に、避難する際に海に入らなくてすむスライダー付きの救命いかだなどの搭載を義務化する方針を固めた。27日に開かれた有識者による事故対策検討委員会の第3回会合で案を提示し、おおむね了承された。ただ国交省によると、小型旅客船に対応したサイズでスライダー付きの救命いかだはないといい、今後国内メーカーとともに開発を進める。
(中略)
検討委でも、体が水につからない救命いかだの義務化を求める意見があり、国交省は一定の水温を下回る海域での救命設備として義務化する方向としている。
(中略)
国交省は27日の会合で、陸上との通信手段についても見直し案を提示した。これまでは船舶安全法に基づき、衛星電話や無線のほか、携帯電話も航路で通話可能な場合に限り認めていた。しかし見直し案では、携帯のみを通信手段とすることは認めないとした。
(中略)
さらに国交省は小型旅客船に対し、非常時に救難信号を自動発信する非常用位置指示無線標識「EPIRB(イパーブ)」の搭載も原則として義務化する方針も示した。

救命いかだだけでなく、携帯電話の通信手段としての禁止、そして、EPIRB(イパーブ)の採用です。

EPIRBは船舶が遭難した際に、本船から救命艇や救命いかだに持ち込むか、船舶が沈没などでEPIRBの水圧センサーにより本体が自動離脱して、遭難信号を発信して非常事態を地上局に伝達させる重要な機器です。 手動または自動で送信することができ、遭難信号はCOSPAS/SARSAT衛星を経て各国で設置している地上局が受信し、船名や送信場所などを解読し特定することができる機械です。

これで、今回のような「知床観光船」の捜索ももっと早く位置を特定できますし、沈没地点から潮の流れを測定して、遠くに流される前に遭難者を見つけることができるかもしれません。



※最後に
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