陸上男子砲丸投げのリオデジャネイロ五輪金メダリスト、ライアン・クラウザー選手が2021年6月18日、東京五輪に向けた米国代表選考会で23メートル37を記録し、同種目で31年ぶりに世界新記録を樹立しました。

米オレゴン州ユージーンで開かれている五輪選考会の同種目決勝において、28歳のクラウザー選手は4回目の投てきで、1990年にランディ・バーンズさん(米国)氏が打ち立てた以前の記録23メートル12を上回りました。

実に31年振りの世界新記録だそうです。

素晴らしい世界記録なのですが、どうしても考えてしまうのは、短絡的とも言われかねませんがドーピングになります。

ライアン・クラウザー選手を疑うのではなく、現代では食料に恵まれて、基本的な身体能力が上がっており、理論に基づいた化学トレーニング、そして記録がでやすいように開発されたシューズなどの運用用具を利用しているのにも関わらず、31年間も破られないのは何とも疑問に思う訳です。

長期間、破られていない世界記録はどのような種目があるのでしょうか?

◆陸上女子400メートル マリタ・コッホ(東ドイツ)
1985年、女子400メートルで、東ドイツのマリタ・コッホ選手が「47秒60」の世界新記録をただき出しました。

この記録は驚異的な記録でして、2021年の今も破られておりません。

2000年代の記録では2019年に48秒14を出したサルワ・イード・ナセル選手(バーレーン)が最高です。

東ドイツは国家ぐるみでドーピングをしておりましたので、かなり灰色の記録です。

マリタ・コッホ


◆陸上女子100メートル フローレンス・グリフィス・ジョイナー(アメリカ)
「限りなく黒に近い灰色の世界記録保持者」と言われていましたのは、フローレンス・グリフィス・ジョイナー選手の存在を抜きに語ることはできません。

奇抜なネイルとド派手なファッションでスター選手となった彼女の口癖は、こうでした。

「ランナーである以前に、私はレディーでありたい」。

そして… 1988年の全米選手権で彼女が樹立した「女子100メートル10秒49」という世界記録は、2021年の今も破られておりません。

2000年代の記録では2021年に10秒63を出したシェリー=アン・フレーザー選手(ジャマイカ)です。

1998年に38歳の若さで亡くなりました。先天性の病気が原因ですが、若すぎる死に対しても薬物疑惑がつきまといます。
フローレンス・グリフィス・ジョイナー


◆女子円盤投げ ガブリエレ・ラインシュ(東ドイツ)
最後は笑っちゃうぐらいに凄すぎる世界記録です。

女子の円盤投げの世界記録で1988年、東ドイツのガブリエレ・ラインシュ選手がマークした、「76メートル80」です。

なんと、このラインシュのこの記録は男子の円盤投げの世界記録を上まわっています。

❖円盤投げの世界記録比較

・男子円盤投げ世界記録 「74メートル08」 ユルゲン・シュルト(東ドイツ1986年)

・女子円盤投げ世界記録 「76メートル80」 ガブリエレ・ラインシュ(東ドイツ1988年)

あらゆる陸上競技の中で、女子の記録のほうが男子を上回っているのは、この「円盤投げ」だけなんですが、女子の円盤のほうが幾分軽いという点を差し引いたとしても、常識的には考えられない記録です。

ガブリエレ・ラインシュ


そして、円盤投げの世界10傑は、1980年代に集中しており、ほとんどが東欧諸国になっています。記録は男子を上回っている記録ばかりです。かなりダークな感じの競技になっています。

❖女子円盤投げの世界10傑

 1 76m80 ガブリエレ・ラインシュ 東ドイツ     1988年7月9日
 2 74m56 ズデンカ・シルハバ   チェコスロバキア 1984年8月26日
 2 74m56 イルケ・ヴィルダ    東ドイツ     1989年7月23日
 4 74m08 ディアナ・ガンスキー  東ドイツ     1987年7月20日
 5 73m84 ダニエラ・コスティアン ルーマニア    1988年4月30日
 6 73m36 イリーナ・メシンスキ  東ドイツ     1984年8月17日
 7 73m28 ガリーナ・サヴィンコワ ソビエト連邦   1984年9月8日
 8 73m22 ツベタンカ・フリストワ ブルガリア    1987年4月19日
 9 73m10 ギゼラ・バイヤー    東ドイツ     1984年7月20日
10 72m92 マルティナ・ヘルマン    東ドイツ      1987年8月20日


◆2017年には世界記録白紙化の提言あり!
2017年に欧州陸上競技連盟のスヴァイン・アルネ・ハンセン会長が、現存する欧州及び世界記録を白紙化する急進的計画を提案しているようでして、それに対する反応は「賛否両論」だったそうです。

国際陸上競技連盟(IAAF)に提出された提案の下では、具体的な年月は未定であるものの、ある年より前に樹立された全記録が過去の記録として取り扱われることになるとされています。

しかし、陸上界でまん延するドーピング問題の一掃を目的とする欧州陸連の計画については、男子走り幅跳びの世界記録保持者であるマイク・パウエル氏らから、厳しい批判の声が上がっているそうです。1991年8月に8メートル95を跳んだ米国出身の同氏は、今回の計画は「無礼であり不当、そして侮辱だ」だと怒りをあらわにしているとのことです。

2021年の現在、計画は実行されておりませんが、真面目に競技に取り組んでいた選手はたまったものではありませんね。



※最後に
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