北朝鮮がミサイル、日本上空通過 過去最長4600キロ飛行―17年以来、被害なし(2022年10月4日)

 日韓両政府によると、北朝鮮が4日午前7時22分ごろ、弾道ミサイル1発を内陸部慈江道舞坪里一帯から発射した。日本の東北地方上空を通過して同44分ごろ、太平洋上の日本の排他的経済水域(EEZ)外に落下した。松野博一官房長官は記者会見で、飛距離が過去最長の約4600キロ、最高高度が約1000キロと推定されると説明。航空機や船舶などに被害は確認されていない。

 防衛省によると、ミサイルは午前7時28~29分ごろにかけて青森県上空を通過した後、岩手県釜石市から東に約3200キロの地点に落下したとみられる。

 日本政府は、全国瞬時警報システム(Jアラート)を通じて、北海道と青森県などに避難を呼び掛けた。北朝鮮のミサイルが日本上空を通過したのは、2017年9月に北海道上空を越えた「火星12」以来5年ぶり。Jアラートの発動もそれ以来となる。「日本に飛来する恐れはない」として破壊措置は取らなかった。

 岸田文雄首相は記者団に「暴挙であり、強く非難する」と述べ、情報収集・分析に努める考えを示した。政府は国家安全保障会議(NSC)を首相官邸で開催。首相はアキリーノ米インド太平洋軍司令官と会談し、緊密な連携を確認した。

 松野氏は、北朝鮮に対し北京の大使館ルートを通じて厳重に抗議したと説明。声明も発表し、国民に平常通りの生活を呼び掛けるとともに、反撃能力保有の検討を含め「防衛力を抜本的に強化する」との意向を重ねて示した。

 防衛省によると、北朝鮮が発射したのは中距離弾道ミサイル以上で、火星12と同型の可能性がある。韓国軍によると、速度はマッハ約17だった。

 林芳正外相はブリンケン米国務長官、韓国の朴振外相と電話でそれぞれ会談し、国連安全保障理事会でのさらなる対応に向け、日米、日米韓で連携することを確認した。

 北朝鮮は今年に入りミサイル発射を繰り返し、巡航ミサイルを含めて今年23回目。

北朝鮮から発射された弾道ミサイルが日本に飛来する可能性がある場合には、全国瞬時警報システム (Jアラート)により、24時間364日、緊急情報を国民に通報してくれます。

実際に日本のどこか弾道ミサイルが着弾するとなった場合は、このJアラートでは日本のどこに着弾するのかはわかりませんので、Jアラートを受け取った全国民は、どこに着弾するのかわからずにじっと物陰に隠れて、自分のいる近くに着弾しないようにと祈ることになるのです。

このJアラート自体も発報が遅いので、Jアラートを受けとった時点で猶予が1~2分ですので、隠れる場所を探して着弾に備えるのには間に合わないのです。

ミサイル到達まで「1分でも助かる可能性ある」 Jアラート、本当の問題と改善策とは?専門家に聞く(2022年10月8日)

(前略)
 防衛省の発表によれば、10月4日7時22分頃、北朝鮮は同国の内陸部から東方向に向けて、1発の弾道ミサイルを発射。ミサイルは7時28~29分頃にかけて青森上空を通過し、7時44分頃に日本の東約3200キロメートルの太平洋上に落下した。

 Jアラートが最初に発令されたのは、同日7時27分。「北朝鮮からミサイルが発射されたものとみられます」とし、北海道と東京都の島しょ部9町村に警戒を呼びかけた。

 続く7時29分の警報では、警戒を呼びかける地域が青森県と東京都の島しょ部に変更された。そして7時42分、北海道と青森県に対し「先程のミサイルは、07時29分頃、太平洋へ通過したものとみられます」と報告している。

 最初のJアラートから1~2分後には、弾道ミサイルが日本上空を通過した事態に対し、ネット上では「逃げようがない」といった声が相次いだ。国民民主党の玉木雄一郎代表も4日午前の記者会見で、Jアラートが鳴った時点で「被害が生じるような地域への着弾、弾道の予測であれば防ぎようがない」と述べている。

 また、東京都の島しょ部に発令されたJアラートが誤発信だったことについて、松野博一官房長官は5日午前の会見で、「システム上の不具合」が原因だったと説明したうえで謝罪し、「再発防止をはかるべくしっかりと取り組んでまいりたい」と述べた。
(後略)
Jアラート

実際に着弾するとなった場合は、たった1分で「自分のところに着弾しないように!」と祈るしかないということです。そして自分のいる場所の近くに隠れる場所があるのかというところが運任せになるわけです。

地下鉄や地下街であれば隠れ家としては一番最高ですし、大きなビルであれば着弾地点にもよりますが爆風に耐えれる強度かもしれません。一方、公園など隠れ場所が少ない場所であれば、探しているうちに着弾してしまうでしょう。

弾道ミサイルを撃ち落とせるか?
実際に日本に弾道ミサイルが着弾するといった場合は、弾道ミサイルを撃ち落とせるのか?というのが鍵となります。

日本の防衛システムは2段階の迎撃できる仕組みが整っています。

第一段階ではイージス艦からの迎撃ミサイルです。

「迎撃ミサイル」をイージス艦から発射しますので、日本に着弾する弾道ミサイルが1発であり、宇宙空間を通って放物線を描いて着弾する弾道ミサイルを迎撃できれば着弾を回避できるかもしれません。

1発だと的を外れれば終わりですので、何発か発射して迎撃したいと思いますが、一隻のイージス艦からは1発の迎撃ミサイルしかコントロールすることができません(一隻に8発装備)ので、2発目はもう一隻のイージス艦が必要になります。現在、海上自衛隊が保有するイージス艦は8隻です。うまくすれば、8発迎撃ミサイルを打てることになります。

迎撃ミサイルはSM-3と呼ばれるものでして、日本のイージス艦に装備されているものは2種類ありまして、SMー3ブロック2AとSMー3ブロック1Bです。

SM-3ブロック2Aは1発当たり約40億円、SMー3ブロック1Bは1発当たり約20億円と、一般的な迎撃ミサイルの十倍から数十倍の価格となる非常に高価な迎撃ミサイルです。

肝心のSMー3の命中率ですが、日本も参加しました発射実験では米ミサイル防衛局により2002年1月25日から開始、2015年12月9日までに40回の発射実験を行いました(SMー6ミサイルなど含む)。そして迎撃に成功したのは33回で、成功率は82.5%でした。

迎撃がうまくいかずに日本の領土、領空に着弾するとなると、再度Jアラートの通知があります。
迎撃システム
迎撃は第二段階があり、防衛範囲20~30㎞の迎撃システム(PACー3:パック3)があるそうです。全国15ヵ所に配備されているそうです。ただし、防衛範囲20~30㎞ですので、射程距離内でないとアウトです。「核ミサイル」が首都圏に着弾する可能性が高いと予測されているので首都圏には5台が配備されているそうです。地上から15㎞(旅客機の巡航高度10㎞)の高さが射程範囲です。

最後の盾のPACー3は、1997年開始の弾道ミサイル迎撃実験計35回(2013年末まで)のうち、成功は29回と成功率は約83%でした。

それでも防衛システムに不安はつきません。

防衛システムに対して懐疑的な見方も多いと思いますが、不信感の根源は1991年の湾岸戦争です。当時PACー3の1世代前のPACー2が、イラクのスカッドミサイルを迎撃するため実戦投入されました。米政府は当初、スカッドのほぼ全てを撃ち落としたと発表しましたが、後の米議会などの調査で命中率はわずか9%だったことが明らかになりました。

この失敗から大改良を重ねて、進化したミサイル「PACー3」は、2003年のイラク戦争で実戦に投入されて弾道ミサイル2発の迎撃に成功して、その高性能を証明しました。

迎撃を決断できるかがカギ・・・決断力の乏しい日本人にできるか?
防衛省・自衛隊のホームページには、こう書かれています。

日本の領域に向けてミサイルが発射された場合には・・・

 ・人工衛星やレーダーで瞬時に察知して直ちに落下地点を予測、
 ・数分内に、国民に警報を発して、避難を呼びかけ、
 ・発射されてから総理の判断を仰いでいては間に合わないため、
  現場指揮官が躊躇なく迎撃できる仕組みを整備済(自衛隊法82条の3)

弾道ミサイルを迎撃する指令を出すのは内閣総理大臣ではなく、現場指揮官なんだそうです。

この現場指揮官がどういう階級の方かは存じませんが、いざ日本に向けて弾道ミサイルが発射された場合、迎撃ミサイルを発射することを一人で決断することができるのでしょうか?

そして、この現場指揮官の号令に部下たちは従って迎撃ミサイルを発射することができるのでしょうか?

発射までの機械の操作はスムーズにできるのでしょうか?マニュアルを見ていてはとても間に合いません。弾道ミサイルは6~7分で日本に着弾するのですから。

はたして・・・・・。



※最後に
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