◆ドキュメント
作成日付:2021/12/02
更新日付:2021/12/04


◆はじめに

「外来種問題」が取り上げられて久しいです。テレビやYoutubeなどで「外来種」の駆除を取り上げられておりますし、各地の自治体などで「外来種」の駆除を行う取り組みも盛んになってきています。

しかしながら、一向に「外来種」が減少することもなく、逆に増えているというのが実態なのではないでしょうか。「外来種」も種類によっては取り除いても繁殖が勝り、焼け石に水の状態となっています。

国もただ手をこまねいているわけではなく、環境省による「外来種対策」を推し進めて「特定外来生物」指定による飼育、栽培や保管、運搬の禁止や輸入の禁止など「外来種」が移入しないような対策をとっておりますが、もっと規制をしなければならないですし、すでに移入して繁殖してしまっている生き物の駆除など課題は山積です。それでも徐々に法律が適正に厳しくなっており、少しずつ対策前進をしております。

一方、古くから移入している生き物など、いわゆる「市民権」といいますか、すでに「在来種」のような扱いを受けている「外来種」もおりますので、親しみ慣れていたり、在来種と思っている方々にとっては「何で外来種を駆除するの?」「外来種の何が問題なの?」といった感情もあるかと思います。

外来種問題をどう捉えるか?どのような未来がいいのか?といった一助になればと思い書いております。もしよろしければ、寄っていってください。




◆外来種とは
「外来種」とは、人間によって棲息していなかった場所(地域、国)に持ち込まれた「生き物」です。すでにその場所(地域・国)に棲息している生き物は「在来種」といいます。

ここでのポイントは『人間によって』です。人間が輸入したものが逃げ出した、人間が飼っていたものが逃げ出した、飼えなくなって逃がした、というものです。

自力で風や鳥によって空から来たもの、海を泳いで渡ってきたものは「外来種」になりません。

これは、あくまで人間側の視点によるものです。

人間がその場所にいない生き物を解き放つことによって、その場所の生態系を変えてしまった、本来そこにある自然を破壊してしまった。その原因となるものであり、言い方を変えれば異物であるものを、取り除かなくてはいけないといった一種の謝罪や懺悔の気持ちからという側面があるのかもしれません。

もう一つは、実際に外来種の魚が在来種の魚を食べつくしたことによる漁業の不漁、外来種の水草が繁茂し川の排水溝につまり、大雨にで排水能力が起きて洪水が発生してしまうなど、何らか人間の経済活動を停滞させてしまう、被害をだしてしまうので、駆除しなくてはいけにといった側面もあります。

いずれにせよ、人間側の視点でそこは線を引いており「外来種」という言葉を使用しているのです。

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進化の歴史(現代は移動できない?)
かつて、パンゲア大陸(※)といった超大陸がありました。陸地は一つですので生き物たちは歩行して移動できました。1億8千万年から分裂しはじめました。その過程でも陸地続きの時は歩行して移動しました。1億5千万年前のジュラ紀に鳥が誕生し、飛んで移動することもできるようになりました。

こうして、生き物はなんなく大陸を移動することができました。

そして現代はどうかというと、大陸は分裂しており生態系は各大陸で独自に進化しております。

かつてのように自ら移動して移動先の大陸で進化していくというのは困難であります。

そこで交通手段が発達した現在は人間による移動手段で生き物たちが大陸間を移動するという考え方です。船や飛行機による輸入、または紛れての移動です。「外来種」の考え方と逆行していますが、このような人を介した生き物の大陸間移動も一つの進化の歴史になるのかもしれません。

人の手を介して輸入された生き物が移動先の自然に解き放たれることによって、その地域で繁栄と新たな進化、新たな生態系を築いていくという考え方もありなのかもしれません。

※約3億年から2億年前の古生代石炭紀後期から中生代三畳紀にかけて存在していた超大陸のこと。

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外来種の問題点
外来種の何が問題なのでしょうか?

1つ目は、在来種とのエサの取り合いで在来種のエサがなくなってしまう、または在来種を食べてしまうなど在来種を減らしてしまい、生態系が崩れてしまうことです。

生態系のバランス?ってなると思います。

要は、ある生き物(個体Aとします)の個体数が外来種に食べられて大きく減少するとします。

その生き物(個体A)は減少すると生き物(個体A)を食べたりする生き物(個体Bとします)、その生き物(個体A)に食べられたりする生き物(個体Cとします)にも及びます。

そうして個体数が大きく変化した生き物(個体Bや個体C)も、更にほかの生き物と食べたり食べられたりで繋がっています(これが食物連鎖です)。

外来種がそこ(個体Aの減少)をキレイに埋めて、個体Bに食べられたり、個体Cを食べてくれれば問題は少ないでしょうが、まずそうはならないので、密接に関わっている生き物たちも大きく個体数を変化させてしまうのが問題なのです。

2つ目は、農作物を食べてしまう、また、人間の食べる生き物を食べてしまうなど、経済活動を停滞させてしまうことです。

3つ目は、毒を刺されたり、噛まれたりして人間に危害を加える。糞尿やウィルス(保持の場合)により、人間が感染症などの病気になってしまう可能性がある為です。

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ジュラシックパーク
映画「ジュラシックパーク」では、ある経営者が琥珀(※)に閉じ込められた蚊から抽出した恐竜のDNAに現在の生き物のDNAを補正して復活させた恐竜のパークを建設して一般公開しようとします。投資家たちは不安になった為、各分野の権威である学者を招待してパークに問題がないことを証明しようとします。

しかしながら、恐竜たちを見た招待された各分野権威の学者たちは、恐竜復活に対して異口同音に『反対』を唱えるのです。

その中のやりとりの中で以下のやりとりがあります。

経営者「絶滅に瀕してるコンドルを作ったとしたら?」
   「コンドルなら君だって反対しないだろ?」
学者 「恐竜は森林破壊やダム建設で絶滅したのではない」
   「地球上での生命期間を全うして自然淘汰された生き物だ」
経営者「科学者の口からそんな意見が出るとは(嘆き)」

ここでのポイントは、自然淘汰されたか、人間によって絶滅まで追い込まれたかということですが、やはり「人間」が関わることによって自然界の生き物に影響を与えることをよしとしていません。

※琥珀とは、数千万年~数億年前、地上に繁茂していた樹木の樹脂が土砂などに埋もれ化石化したもの

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特定外来生物
環境省が2005年に『外来生物法』を施行しました。端的に言いますと『特定外来生物』による日本古来からの生態系の保護、人間の生命・身体の保護、農林水産業の保護が目的です。

『外来生物法』で定義されている『特定外来生物』とは外来生物(海外起源の外来種)であって、生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼすもの、又は及ぼすおそれがあるものの中から指定されます。特定外来生物は、生きているものに限られ、個体だけではなく、卵、種子、器官なども含まれます。

特定外来生物に指定されたものは以下の規制されております。

❖特定外来生物に指定された場合の規制
 ・飼育、栽培、保管及び運搬することの原則禁止
 ・輸入することの禁止
 ・野外へ放つ、植える及び撒くことの原則禁止
 ・許可を受けて飼育(=飼養)する者が、許可されていない者に譲渡、引渡し、売買の原則禁止

❖罰則(個人の場合で代表的なもの)
 ・販売目的で許可なく飼育した場合・・・懲役3年以下、罰金300万以下
 ・ペットとして許可なく飼育した場合・・・懲役3年以下、罰金100万以下
 ・許可なく野外に放ったり、植えたり、まいたりした場合・・・懲役3年以下、罰金300万以下
 ・許可なく輸入した場合・・・懲役3年以下、罰金300万以下

実際に検挙される人はおります。犯罪を抑制するだけためにある法律ではありません。

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国内外来種とは
【2021.12.03】追記
最初に『「外来種」とは、人間によって棲息していなかった場所(地域、国)に持ち込まれた「生き物」です。』と書きました。

何故、こう書いたかと言いますと「外来種」という言葉は、その字の通り海外から日本に持ち込まれた外来生物(国外由来の外来種)のことを表すと思われがちです。

しかし「在来種」でも、日本国内のある地域から、もともと棲息していなかった地域に持ち込まれた場合には「外来種」扱いとなり、もとからその地域にいる生き物に影響を与える場合があります。このような「外来種」のことを「国内外来種」と呼んでいます。

そして外国からきた外来種と同じく問題とされています。

一つの例として、日本固有種のニホンイタチは全国に広く棲息していますが、本来は本州、四国、九州などに棲息していました。

人間によって、ネズミの天敵として、また毛皮利用の目的で本来棲息していない地域(北海道、沖縄諸島(※)、伊豆諸島など)に導入されました。ニホンイタチは、小さな島では強力な捕食者として生態系に影響を及ぼすことがわかりました。

琉球列島の与論島ではヘリグロヒメトカゲ、クロイワトカゲモドキ(固有亜種ヨロントカゲモドキ)、キノボリトカゲ等の爬虫類の絶滅を引き起こし、オキナワアオガエルの絶滅もニホンイタチの捕食が原因のひとつと考えられています。

※沖縄諸島( 本島周辺離島、久米島、慶良間列島、粟国・渡名喜島、硫黄鳥島)、先島諸島(宮古列島、八重山列島、尖閣諸島)

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日本の在来種は外来種に負けているのか?
【2021.12.03】追記
まず「外来種」は沢山の種類が輸入されてきており、おそらくですが沢山の「外来種」が逃げ出す、放たれていると思います。それでも全ての「外来種」が生きられないのは、日本の野生では生きられない為です。

熱帯、温帯の生き物は、日本の寒い冬を越すことができません。逆に寒帯の生き物は日本の暑い夏を越すことができません。人間によって適切な環境で飼育されていることで生きていられるのです。

日本の野生で生きながらえるには、日本の四季でも適応できる生き物です。

次に天敵がいないことです。天敵がいますと繁殖して増えていく前に捕食されてしまいますので「在来種」を駆逐する前に自分たちが駆逐されてしまいます。

そしてニッチ(隙間)領域があることです。天敵もいない、生存競争する相手もいない、種を増やせる最適な環境があるとなると、あとは繁殖して種を増えるのみです。

最後に繁殖力が強い事です。一度に生まれる数が多い、あるいは頻繁に繁殖するようでないと(外来種にとって)未開の地で種を増やすことができません。天敵や「在来種」と生存競争をしないといけませんので、種を増やすことが繁栄への近道です。

一部の「外来種」が狭い日本の中で爆発的に増えて「在来種」を駆逐したり、農林水産業などに被害をもたらしているのです。

もし「外来種」が強い、「在来種」が弱いという構図であれば、狭い日本の中はすでに外来種だらけになってしまっています。

「外来種」が強いも弱いもないと思います。

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日本の在来種は猛威を振るっていないのか?⇒いる!
【2021.12.04】追記
日本の「在来種」が外国で爆発的に増えてしまっている例はないのか?日本の「在来種」は島国で進化してきたので外国で放たれたとしても暴威を振るうことはないのではないだろうか?ということですが、日本の「在来種」が外国で猛威を振るっている例はあります。

ワカメ、キヒトデ

ワカメは、日本人の食卓にのぼる海藻ですが、ワカメの増え方ですが根元には6~7月ころに胞子葉(ほうしよう、通称:めかぶ(生殖器官))が出来ます。 この胞子葉から配偶子と呼ばれる胞子が放出されます。 この配偶子が海底に付いて発芽します。

キヒトデは、日本でもカニ、ウニ、ホタテガイやアサリなどの漁業資源を捕食して被害を与えている存在です。

ヒトデは、メスとオスがそれぞれ卵と精子を海中に放ってそこで受精し、ヒトデとは形の違う「幼生」が海の中を漂いながら数回変態して(形を変えて)、ヒトデの形になるという繁殖をおこないます。

双方とも、アメリカ、フランス、イタリア、オーストラリア、ニュージーランド、黒海、地中海など世界中の海域に移送されて繁殖していることが確認されています。

原因は「バラスト水」です。日本で荷揚げしたタンカーが船体の安定を保つために、空になった船倉に「バラスト水」という海水を取り込むのです。日本で海水を取り込んだ際にワカメの胞子やヒトデの幼生が紛れ込みます。そして、現地の海でバラスト水を放出して軽くなった分荷物を載せるのです。そこで爆発的に増えてしまうという構図です。

ワカメが増えたら、日本人から見れば食料が増えてうれしく思いますが、海外ではワカメを食べる習慣はほとんどありませんので刈り取られることがありません。そのため、増え続けた侵入ワカメが養殖のカキや、ホタテ、ムール貝、イセエビなどの成長を阻害したり、漁業用の機械にからまったりするなど、水産業に重大な影響をもたらしており『世界の侵略的外来種ワースト100』に指定されています。

金魚

金魚は実は中国原産です。中国のフナの突然変異種であるヒブナを改良したことがはじまりです。

日本に初めて金魚がやって来たのは、室町末期です。最初は高級品で、一部の貴族の間でしか飼うことができませんでした。

そして江戸中期になると金魚養殖が始まり、一般でも手に入れられる値段になり庶民にひろがっていきました。

観賞魚として輸入された金魚ですが、巨大化して持て余した人たちが水辺に逃がした結果、アメリカやオーストラリアなどで繁殖して爆発的に増えたことにより、在来種が激減し、排泄物による水質汚染とそれを栄養とする藻の繁茂により、水辺が汚れてしまうことも起きています。

クズ

クズはマメ科ツル属の多年草です。その名の通りツルを伸ばして成長します。秋の七草(秋の七草は食べられません)の一つに数えられております。ただし、クズの根は漢方薬になり、効能としては、発汗、解熱、鎮痙(ちんけい:痙攣を鎮める)です。血行促進や発汗作用などがあり、風邪や発熱などの症状を和らげるといわれています。

アメリカ合衆国独立100周年記念として1896年のフィラデルフィア万国博覧会で、明治政府が日本館を出展した際に飼料作物および庭園装飾用としてクズが持ち込まれました。

そして庭園やポーチなどの装飾として人気になりました。そのうちに他の外来種と変わりマりませんが、爆発的な繁殖力で広範囲に広がり、取り除けなくなりました。何しろ、クズは地上部で10mに達します。そして地上部だけを取り除いても駆除することはできません。地下にある長さ1.5mにも達する塊根(かいこん:植物の根が肥大して養分を蓄える働きをする貯蔵根)を取り除かない限り完全に駆除したとはいえないのです。

クズが繁茂することにより、樹木に巻き付くことにより樹木の枝が曲がり枯死(こし:草木が枯れること)し、他の草花より成長が速いので、クズの生えた地域はクズだらけになります。このような状態を「緑の砂漠」といいます。こうしてクズは森林を破壊していきます。

また、アメリカではクズを「グリーンモンスター」と呼んでおり『世界の侵略的外来種ワースト100』に指定されています。



※最後に
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