※2021.12.25更新
※2022.01.05更新(全体見直し)
※2022.01.10更新(食用)
※2022.01.11更新(天敵)
※2022.01.13更新(遮光シート)
ナガノツルノゲイトウ
最強最悪の外来種「ナガエツルノゲイトウ」があるそうですね。

熱帯原産の水草で短い時間に大繁殖して、作物を駆逐して農業に被害、池や川を覆って船の通行を妨げたり、水中に日光があたらなくなり微生物や魚などの水棲生物が死に絶えて漁業にも被害、そして、千切れた水草が排水口をふさいで、治水ができなくなると、深刻な被害をもたらします。

もともと観賞用植物として輸入されたものだったそうです。

◆基本情報
【品種名】 : ナガエツルノゲイトウ
【外来種】 : 『地球上最悪の侵略的植物』と呼ばれる
【分類】  : ヒユ科に属する南米原産の多年草
【草丈】  : 茎が1mに達する
【分布地】 : 南アメリカ原産、北アメリカ、アジア、オセアニア、アフリカに分布
【開花期】 : 4月~10月
【冬場】  : 冬は地上部は枯れる(根が生きている)
【繁殖】  : 地下部でランナーを伸ばして芽を出す、千切れた葉や茎から芽を出す栄養繁殖
【特徴】  : 水辺の湿った環境を好む、日当たりの良い肥沃な条件が重なると爆発的に繁殖
【シーズン】: 4~10月(冬は地下の根だけとなる)

❖ナガエツルノガイトウが最悪なのは以下の通りです。
 ・地中深く根付いて水草を簡単に引き抜くことができない
 ・わずかでも根が残ると生えてくる
 ・駆除した根や茎から繁殖する
切っても生えるナガノツルノゲイトウ

これは最強ですね!!!
1回の除草では再び生えてくるそうで、何度か除草しないといけないそうです。群落(※)になると、重機を使用して除草しないといけないので多額の費用がかかるそうです。

※一定範囲の場所に生成し互いに繋がりのある植物の個体群全体を指す。




 これまで25都道府県で確認されて勢力拡大中【2023.07.22更新】

農業現場に深刻な被害をもたらす外来水草、ナガエツルノゲイトウが少なくとも20府県で確認されていることが分かっているそうです。

1989年に兵庫県尼崎市で初めて発見されて以降、現在までに茨城、埼玉【2022年末追加】、東京、千葉、神奈川、山梨【2022年末追加】、静岡、三重、福井【2022年末追加】、滋賀、奈良、京都、大阪、兵庫(淡路島)、鳥取、島根、山口、香川、徳島【2022年末追加】、福岡、佐賀、長崎、熊本、鹿児島、沖縄【2022年末追加】の各府県で確認されております。あっという間に47都道府県に拡がってしまうかもしれませんね。

ナガエツルノゲイトウの生えるところ、オオバナミズキンバイと呼ばれるこちらもやっかいな中南米原産の外来種も繁茂していることが多く、侵略された土地は2重の苦しみとなります。

❖ナガエツルノゲイトウの被害が有名な所【2021.12.25】追記

・琵琶湖
 琵琶湖では、外来種の水草オオバナミズキンバイとナガエツルノゲイトウが群生して、在来水生植物の生息域を脅かすだけでなく、群落が水底への日光を遮るため、水生動物の卵や稚魚などが死んでしまったりと問題になっています。

 岸沿いの水面を広い範囲でおおってしまうことがあり、船舶の航行障害や漁具への絡み付きといった被害が発生していることに加え、瀬田川等を通じた下流域への流出、ナガエツルノゲイトウの農地への侵入が確認されています。また、水質や水産資源への悪影響、湖畔の植生への影響などが心配されています。

・印旛沼
 ナガエツルノゲイトウやオオバナミズキンバイなどの外来水生植物が印旛沼及び手賀沼とその流域河川で急速に繁殖しており、水質・生態系などへの影響や農業・漁業被害などが懸念されています。


 南米では何で増えないのか?【2022.01.11】追記

南米ではナガエツルノゲイトウノミハムシという天敵がおり、しっかりと食べてくれるため爆発的な繁殖をしないのです。この昆虫を食べる動物もいるため、うまく食物連鎖ができていますね。しかし、日本でこの昆虫を持ち込んでも狙ったものを食べてくれない可能性が高いとのことで検討をやめたとのことです。

いやーよかったです。天敵を導入したところで過ちの上に過ちを重ねていたことでしょう。天敵を導入してうまくいったということをきいたことがありません。なかでも沖縄のハブ退治のために導入されたマングースの例はとてもよく知られていると思います。


 駆除は薬品+刈り取りを複数回繰り返し

圃場※1(ほじょう)などに一度根付いてしまったナガエツルノゲイトウを駆逐するのは生半可でできることではありません。何せ繁殖能力が極めて高いので、刈り取った茎や引き抜いた根が少しでもありますと、そこから繁殖してしまうので完全に撤去する必要があります。

除草剤としては非選択性除草剤※2 (グリホサートカリウム塩)を散布(使用回数注意)し、 再生した場合再度駆除していき、完全に除去できるまで繰り返し行っていきます。

※1:農作物を栽培するための場所のこと。水田や畑(普通畑・樹園地・牧草地)などを包括する言葉。
※2:散布する場所に生育する雑草をすべて防除することを目的とした除草剤で、ほとんどの種類の植物に有効な除草剤。





 日光を当てない事で枯れさせる(かなり有効)【2022.01.13】追記

遮光率99%のシートをナガエツルノゲイトウが繁茂する場所を覆うように被せることで、光合成を防いで枯れ死させる方法はかなり有効です。

ただし、ナガエツルノゲイトウ以外の生き物すべてが日光に当たらなくなりますので死んでしまいます。かなりの犠牲を払いますが、ナガエツルノゲイトウが繁茂する場所は他の生き物に日光が当たらないので、すでにその場所に生き物が死に絶えていると思いますので犠牲は少ないと思います。

でも、ゼロではないので「割り切り」が必要になる方法だと思います。

遮光シートを敷いて1年以上経過しても全ては死滅しないようです。【2023.07.23】追記
遮光シート敷く対策をしたナガエツルノゲイトウ
他の植物は全滅していますが、ナガエツルノゲイトウだけは遮光シートの下でも新たな芽を出して生きています。不死身の植物ですね。【2023.07.23】追記
遮光シート敷いても芽が出るナガエツルノゲイトウ


 砂漠の緑化に利用することができないのか?

いつも思うんですけど、こういうのは砂漠化が拡がっている場所に植えて生やして、砂漠化を防ぐことができないものでしょうか?この方法自体も外来種の流入と同じ扱いになってしまうんですけども。

ただ、この植物を持ってきた人間が悪いのであって何も罪はありません。植物には変わりありませんので、何か転用できないものでしょうか。

なお、ナガエツルノゲイトウは特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律で特定外来生物に指定されており、飼育・栽培・保管・運搬・販売・輸入などが禁止されていますので、むやみに野生に生えているものをとって持ち帰ったりしてはいけません。
陸地のナガノツルノゲイトウ

❖砂漠に植えてみたら砂漠化解決?・・・枯れてしまいます!

・水を好む
ナガエツルノガイエトウは水路や川、池などの湿地帯に繁茂する植物です。湿生植物(水に浮いて繁茂しますので水生植物といってもいいかもしれません)ですので水を好みます。

ただ、乾いた陸上でも根付いてしまい増殖していきます。乾いたといっても表面上だけで完全に乾いてなければ、水を求めて根をはってしまいます。

こんなに増殖するのだから、緑のない砂漠に植えてみれば、砂漠化が解消するのでは?と考えてしまいそうですが、砂漠には水が極端に少なく、土壌も土ではなく砂であり、根を伸ばしても、地下深く伸ばさないといけません。

・昼夜の気温差が激しい
気温は場所により異なりますが、最高気温で40℃を超える場所も少なくなく、夜間の温度が0℃付近まで下がる場所もありますので、1日の温度差が大きいです。

降水量も少なく、年間降水量も250mm以下(※)です。

※年間降水量の目安
 1000mm〜      ・・・稲作ができるレベル
  500mm〜1000mm ・・・畑作ができるレベル
  250mm〜500mm ・・・牧畜ができるレベル
 〜250mm       ・・・雑草も生えないレベル

・肥沃な土壌がない
砂漠化の原因の一つに風により土が動かされてしまう動き(風食という)があります。風により、肥沃ひよくな土(表土)が奪い去られてしまうと、植物の根がむき出しになり枯れてしまいます。また表土が失われた場所は、植物に必要な水や養分を十分に与えることができないので、植物の育ちは良くありません。さらに、風が吹くたびに、残っている砂も奪われ続けるので、植物は育つことができません。

・塩が溜まる大地
砂漠地帯では、地面に塩がたまる塩類集積(※えんきしゅうせき)という問題があります。塩類集積が起きると、土の中の塩が植物に害を与えるため、その土地はやがて植物の育たない土の塩だけの砂漠さばくとなっていきます。

※砂漠では降水量が非常に少なく、土も空気も非常に乾燥しています。砂漠では自然の雨だけで畑(植物)に十分な水を供給するのは難しいです。そこで用水路などを作って近くの川や湖から水を引いたり、地下水をくみ上げたりして畑(植物)に水をまいています。畑にまかれた水は、一部は植物がすい、一部は土の下の方へと流れ、一部蒸発といって水が水蒸気に変わって空気中に水が逃げていきます。砂漠では太陽が強く照りつけるため、たくさんの水が下から上へと移動し、蒸発してしまいます。川や湖、地下水には塩がとけているのですが、土の中で水が移動するときに塩も水の中に溶けたままで一緒に移動します。しかし土の表面あたりで水が蒸発するとその中に溶けていた塩は固まりとなって残ってしまいます。

砂漠は植物にとって非常に過酷な環境であり、最強最悪のナガエツルノガイトウでも枯れてしまいます。



❖他への転用の可能性【2021.12.25】追記

◆京都大学の『
琵琶湖沿岸抽水植物群落全域における植物種別糖組成の分析と バイオエタノール生成可能量の推定』研究結果

 この中でバイオエタノール生成可能の植物にナガエツルノガイトウが含まれています。
 うまく実現化できるといいですね。

・研究背景と目的

  近年グローバル化に伴い外来種問題が深刻化してきた。中でも湖沼などに侵入した外来植物は繁茂し、人間の生産活動や生態系に悪影響を与えることも少なくない。そうした背景から各地の湖沼で自治体等による外来植物の駆除が行われている。
  しかし、駆除された外来植物の多くは焼却処分され、利活用の推進が課題となっている。一方で資源枯渇問題や地球環境問題から再生可能資源としてバイオマスが注目されている。
  駆除された外来水生植物はバイオマスとして食糧生産と競合しないという大きな利点を有するが、水生植物に関する知見は不足している。
  また、駆除された植物の利活用を考える上で地域における資源量の評価が重要となる。そこで、本研究では(1)外来水生植物の組成の把握、(2)琵琶湖沿岸抽水植物群落全域における植物種別バイオエタノール生成可能量の推定を目的とした。

・研究結果
  本研究により琵琶湖沿岸抽水植物群落における出現面積上位外来植物の組成を明らかにし、ヨシおよび出現面積上位外来植物からのバイオエタノール生成可能量を 10 の植物種別、53 の地区別に示すことができた。


◆肥料に転用(滋賀県守山市)

・官学連携のアイデア

 除去したオオバナミズキンバイは産業廃棄物として扱われ、自治体が経費をかけて処分している。その中で、有効な活用法を探っていた守山市は、琵琶湖周辺でかつて水草を畑に敷いて肥料にしていたことに着目。昨年夏、「肥料に転用できないか」とアイデアを持ちかけた。

 オオバナミズキンバイを3カ月間かけて乾燥、発酵させ、細かく粉砕。成分を分析したところ、肥料として必要な物質の窒素とリン酸、カリウムを多く含んでいることが分かった。これに米ぬかを混合して出来上がった堆肥を使ってコマツナを温室栽培したところ、既存の化学肥料に比べ、重さレベルで生育が1割アップしたことが確認された。

・今後の展開
 守山市は今年度、この堆肥を使って露地栽培で野菜を育て、生育状況や安全性、出来栄えなどの実証調査を行う方針。問題がなければ商品化を目指す。

 生産態勢や販路が確立されれば堆肥の売却益が見込め、オオバナミズキンバイの除去費用に充てることも考えられる。原料として活用が増えれば除去が進み、生態系の保全につながる。


 食べれることはできるのか?【2022.01.10】追記

ひとたび、その土地に根付くと爆発的に増えるナガエツルノゲイトウですが、見た目はうまそうに感じませんが食べることはできないのか?ということですが、湯がいてお浸しにしても、油炒めにしても、食べれることは食べれるが、あまり美味しくないそうです。
ニジマスとかホンビノス貝とか食用として定着すると駆除対象にならないんでしょうが何か転用できれば、ここまで嫌われずにすむんでしょうね。



※最後に
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